盛り上がりを見せるバレーボールの試合の中で、バックアタックが決まれば一気に流れを呼ぶ事ができます。
仲間の士気を上げ、派手さもかっこ良さも含まれた武器といえます。
ここでは、バックアタックについて見ていく中で、上達のコツや参考になる選手などを紹介していきます。
バックアタックとは
バックアタックは通称パイプと呼ばれ、アタックラインより後方でジャンプをして打つスパイクのことです。
前衛でスパイクを打つのに対して、その間から後方でスパイクを打つことを、パイプを通すと言われています。
これは非常に有効な攻撃です。
バックアタックのメリット
スパイカーが3枚の時
基本的には両チームとも前衛には3枚いるので、ブロッカーとスパイカーは3対3ということになり、1人には必ず1人は付いてくるという状態です。
そんな時に、セッターとリベロを除いて後衛にいるもう1人のスパイカーが、後方からスパイクを打つことによって3対4となるので有利になります。
スパイカーが2枚の時
セッターが前に上がるローテーションでは、前衛が3枚でもスパイカーは2枚ということになるので、ブロッカーとスパイカーでは3対2という不利な状態になります。
しかし、リベロを除いて後衛にいる2枚のスパイカーが、両方またはどちらかでもバックアタックを打てば最大でスパイカーは4枚になり、3対3、さらには3対4と有利なゲーム展開が可能になります。
相手を交わすことができる
前衛でのスパイクでは近距離にブロックがあるのに対して、バックアタックは後方の攻撃になるのでブロックとの間に距離があります。
普段よりも相手の動きやコートが良く見えるので、ブロッカーを交わしてレシーバーのいない所へ打ちやすくなります。
バックアタックのデメリット
非常に有効な攻撃なら誰もが取り入れたいものです。しかし、それができないのは大きなリスクがあるからです。
高度な技術が必要
高度なアタック技術
普段のスパイクとは違い、アタックラインより後方でジャンプをしなければいけません。
ネットとの距離があるので鋭角に打てばネットにかかり、角度を上げて打てばサーブのように飛んでアウトになります。
また、トスだけを見ていても相手をかわせないので、視線と技術の両方が必要になります。
高さと勢い
バックアタックは、高い打点から強い打球を奥に打ち込みます。
ジャンプした状態で手がネットより下になれば、山なりのスパイクを打つことになり、チャンスボールになってしまいます。
バックアタックは、高さと勢い、そして高度なスパイカーの技術が合わさってなせるものなのです。
セッターとのコンビプレー
普段のトスは、距離や幅を、ネットを基準にして考えることができますが、バックアタックではネットから距離があるのでそれが困難です。
また、助走・身長・ジャンプ力に選手の違いが大きく現れるので、ひとりひとりに合わせたトスが必要になります。
1人合わせるにも普段より時間のかかるバックアタックを何人とも合わせ、さらにトスを変えなければいけないので、高度なセッターの技術が必要になります。
厳しいルールがある
バックアタックにはルールがあります。
後衛の選手がアタックラインを踏んだり、超えたところでジャンプをすることはルール違反となり、禁止されています。
違反は相手に点数が入ります。高度な技術を兼ね備えたうえで、アタックラインがどこにあるのかを感覚で覚えなければいけません。
バックアタック上達のコツ
バックアタックは鋭角に打つことは難しいので、基本的には奥に強いスパイクを打つことが重要になります。それを理解して練習を行います。
大きく助走
バックアタックを打つには高さが必要なので、まず大きく助走をつけます。
自分が打ちやすいゾーンを探す
次に自分の打ちやすいヒットゾーンを探します。セッターと何度も合わせて、見つけていきます。
ジャンプ力を向上させる
次になるべく角度を付け、奥に勢いのあるスパイク打つ練習をします。
バックアタックには高さが必要ですが、身長が低くてもジャンプ力があれば良いので、トレーニングで重点的に鍛えましょう。
アタックラインの位置を感覚でつかむ
またセッターと合わせる最中、アタックラインの位置を感覚でつかみ、ゲーム中どんな状況でもラインを踏まないよう練習を重ねることが大切です。
バックアタックの使い方
相手ブロックを分散させる
ブロックには、コミットブロックとリードブロックがあります。
コミットブロックとは、スパイカーを見ながらブロックを飛ぶことで、クイックなどには適した方法ですが、トスを振られるとノーマークで相手に打たせてしまいます。
またリードブロックとは、トスを見てからブロックを飛ぶことで、振られることなくブロックをすることができますが、間隔の速いクイックに付いていくのは難しいです。
近年ではリードブロックが中心になり、クイックからオープントスにまで瞬時に移動できるよう練習されてきました。
つまり、近頃ではどの攻撃でもノーマークにはなりにくいということです。ブロッカーはスパイカーの動きを見ながら、トスの上がったほうへ付いていきます。
3枚のスパイカーを意識した近年のリードブロックは、その役割を充分に果たしています。そこで、不意をつく4枚目のスパイカーによるバックアタックが有効になります。
1人に1枚ブロックがあり、なおかつそれを2枚にできるよう意識している相手ブロッカーに、後衛から見えにくい4枚目のスパイカーを加え撹乱させることができます。
分かりきったトスでない限り、バックアタックにつくブロッカーは1枚以下になるはずです。さらに、4枚目を加えることで、他のスパイカーの攻撃も通りやすくなります。
使い方とすれば、ブロッカーが次に動く前の、クイックのすぐ後から来るようなバックアタックは理想的です。
センターがAクイック、ライトからセンターセミに入るような、前衛選手が交差したコンビの後ろから来るバックアタックは、相手が予想することも難しいので有効です。これが「パイプを通す」ということになります。
バリエーションとしては、コート幅いっぱいのライトとレフトの攻撃に重点を置きながら、センターでパイプを通すのも有効です。
コンビとしては優秀なバックアタックですが、相手が後ろに体制を立て直すと決定率は非常に低いので、あからさまであったり、単体で使うのは向いていません。
重要なのはテンポ
バレーボールには、コンビで使うテンポが3つあります。
サードテンポ
サードテンポはトスが上がってから助走に入る、昔からあるオープンバレーのテンポです。
セカンドテンポ
セカンドテンポはセットアップと同時に助走に入る、日本でも世界でも多いテンポです。
ファーストテンポ
ファーストテンポはセットアップの前に助走に入る、スパイカーに主導権がありセッターがそれに合わせるテンポです。
セットアップからの速さの違いと言えばそうですが、どちらが主導権を握るかというのが大切なところです。
バックアタックにおいてサードテンポでは、相手が体制を整える時間があるのでその効果を発揮できません。
できるだけ速いセカンドテンポでのバックアタックが効果的です。ファーストテンポのバックアタックは世界でも例はありません。
速いセカンドテンポの攻撃を繰り出すチームは国内でもたくさんいます。しかし、スパイカーが主導権を握ってセッターがそこにトスを合わせる、本当の意味でのファーストテンポを展開しているチームは少ないです。
速いバックアタックを打つには
大切なのはレセプション、それからディグです。
ある程度セッターの位置に返すBキャッチがなければ、コンビバレーは成立しません。それはバックアタックも成立しないということです。
そして、正確にトスを上げられるセッターが必要です。
セッターが主導権を握るセカンドテンポですが、より速い攻撃になるとその正確性が求められます。
ファーストテンポでは、主導権のあるスパイカーの最高到達点に合わせる技術が問われます。
バックアタックの参考になる選手やチーム
スパイカー
- 全日本男子チーム:柳田将洋選手
- 元全日本女子チーム:木村沙織さん
この2人は理想的なスパイクフォームです。助走から空中のボールさばきまで、スパイクフォームが整っているのでバックアタックでもその力を充分に発揮できます。
セッター
- 元全日本女子チーム:竹下佳江さん
- パナソニックパンサーズ男子チーム:深津英臣選手
この2人は、どの位置でもスパイカーに合わせた正確なトスを上げているセッターです。世界と比べてもレベルの高いセッターです。
チーム
大塚高校男子バレーボール部
日本でより速いバレーを展開し、バックアタックを含めたコンビを巧みに使っている、サーカスバレーで有名なチームです。
世界や全日本チームのように、大型の選手がいなくともこのテンポでゲームを展開すれば、バックアタックはさらに有効な手段となります。
使い方やコンビの組み方は参考になると思います。
なお、ファーストテンポを展開していたのは沖田昌人さんがセッターの時代のみです。
まとめ
バックアタックはスパイカーの技術はもちろん、レシーバーとセッターにもその技術が求められます。実践で使用するには練習を重ねるしかありません。
バックアタックは難しい技ではありますが、成せれば強い武器になります。ぜひチームの攻撃に取り入れてみてください。